DV被害と法定離婚事由
離婚理由として、配偶者による暴力(DV)をあげる人は多い。DVは被害者が配偶者に離婚を切り出せない要因にもなり、離婚後も深刻なトラブルにつながることがある。
DVといえば、殴る、蹴るといった身体的な暴力がまず思い浮かぶが、精神的な暴力もDV なのだろうか?
精神的な暴力もDV
ドメスティック・バイオレンス(DV)は直訳すると、家庭内暴力。子供が家族に対して振るう暴力と紛らわしいため、配偶者による暴力といい表されています。
圧倒的に多いのは、妻が夫に暴行されるケースですが、近年は夫が被害者になるケースも見られます。
配偶者による暴力は、以前は家庭内でのトラブルとみなされ、「法は家庭に入らず」の立場から行政が積極的に関与していませんでした。
しかし、犯罪行為につながる可能性があり、しかも同じ家庭に被害者と加害者がいて外からは被害の実態が見にくいという特殊な実情から、むしろ行政など第三者の積極的な関与が必要と考えられるようになりました。
2001年つくられた配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)では、行政に被害者の方と被害の防止に積極的に関与することが義務付けられています。
当初は、DVの配偶者間(内縁)を含むの身体的な暴力に限定していましたが 2004年に、配偶者からの暴力とは身体に対する暴力とこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と改定されました。 つまり、精神的な暴力もDVと認められたのです。
身体的暴力のみならず、PTSD(外傷後ストレス障害)など精神障害をひきこ引き起こす精神的暴力は、傷害罪で処罰の対象にもなります。
DVとされる具体的な行動とは
実際に DVとされる暴力とはどんなものでしょうか。
- 身体的暴力 殴る、蹴る、首を絞める、刃物で傷つける、物を投げつける、など直接身体を傷つける行為。
- 精神的暴力 無視する、見下した言い方をする、長時間説教する、大切なものをわざと壊すなど、わざと心を傷つける行為
- 社会的暴力 交友関係や電話を細かく監視する実家に帰らせないなど被害者を社会的に孤立させる行為
- 経済的暴力 生活費を渡さない、お金を取り上げる、外で働かせないので、経済的に困窮させる行為
- 性的暴力 セックスを強要する、避妊に協力しない、中絶を強要するなど、性的なことを強要したり抑圧する行為
- 子供を利用した暴力 子供に暴力を見せる、子供を取り上げるなど、子供を使って追い詰める行為
配偶者からこういった行為をされていたら、警察や地方公共団体に設けられた相談窓口に訴え出て、保護を求めることができます。
DVにおける被害者と加害者
DVでは、被害者にも加害者にもDVという認識がないこともあります。思い当たるところがないか、振り返ってみましょう。
被害者の特徴
- 暴力を受けても自分が悪いと思う
- 世間体が悪くて被害を受けていても周囲から隠す
- 生活基盤を失うことを恐れて逃げ出せない
- 身体や精神の暴力に耐えるために感情が麻痺している、絶望感や無力感がある
加害者の特徴
- 配偶者に暴力を振るうことに罪悪感がない、認めようとしない
- 殴っても「こづいた程度」などと、暴力を過小評価する
- 身体的・精神的暴力を配偶者のせいにする
DV被害を受けていたら
DVは法的離婚原因となっており、法律的にも離婚の原因として認められている行為です。
DV被害を受けている場合、離婚をする、しないはともかく、まず自分自身と子供の身を守ることが先決です。
単なる夫婦喧嘩とは異なり、DVは時間が経過しても自然に治ることはありません。精神的な暴力も後々、PTSDなどの精神障害を引き起こすことがありえます。配偶者暴力相談支援センター、社会福祉事務所、警察署と言ったしかるべき 機関に相談して、身を守る手段を考えましょう。
また、DVの被害者は、その父親がDV 加害者だったケースが大半と言われています。家族から虐待を受けて育った被害者が成長し、心的外傷が原因でDV加害者となってしまうわけです。 カウンセリングを受けることで、心的外傷が癒されて DV が治ることもあります。
離婚は避けられないにせよ、DV被害の連鎖を断ち切るためにも、離婚成立後にトラブルを防止するためにも、加害者にDVを繰り返させないよう心みたいもの。加害者から安全な距離を保ちつつ、カウンセリングを受けるように勧めましょう。
カウンセリングについては、全国の各市町村に設けられているDV相談窓口や支援センター、社会福祉事務所などに問い合わせをしてみてください。