内縁・事実婚の戸籍と姓
内縁・事実婚の解消
内縁・事実婚とは、単なる同棲とは異なり、結婚の意思がある男女が、事実上の夫婦として共同生活を営んでいる関係を言います。
なお、法律的に事実婚は、①当事者間の夫婦関係を成立させようとする合意、②夫婦共同生活の存在の2つの条件があれば成立すると考えられています。
法的な婚姻関係はないため、内縁・事実婚の解消(離婚)に手続きは必要ありません。
しかし、離婚の際には、財産分与や慰謝料請求をはじめ、家庭裁判所への調停の申し立てなどができ、子どもがいる場合は、養育費の請求ができるなど、法的な保護が受けられます。
事実婚解消に伴う慰謝料
事実婚でも、一方当事者に夫婦関係の破たんの責任がある場合には、他方が慰謝料を請求することは認められます。
事実婚と届出婚は婚姻届(法律婚)をしたかどうかという形式面での違いがあるのみで、実質的にはいずれの場合にも夫婦であることに違いはありません。そのため、慰謝料についての考え方は同様となります。
事実婚解消に伴う財産分与
届出婚に関する財産分与の規定(民法768条)は事実婚の場合にも準用(同じように適用)され、2人で協力して築いた財産は事実婚解消時に公平に分配することになります。
- 第768条
- 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
- 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
- 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
引用元:民法第768条
内縁解消は戸籍に影響しない
内縁・事実婚の夫婦は、お互いの戸籍は別々のままで暮らしています。そのため内縁・事実婚を解消しても、それぞれの戸籍や姓は変わりません。
内縁・事実婚の夫婦の子どもと姓
内縁・事実婚の夫婦に子供が生まれると、非嫡出子として母親の戸籍に入り、母親と同じ姓を名乗ることになります。内縁・事実婚の場合、解消してもそれぞれの戸籍と姓は変わらないので、子どもも母親の戸籍、母親の姓のままです。
子どもの戸籍を変更したい場合
内縁の夫婦の子どもを父親の戸籍に入れ、父親と同じ姓を名乗られたい場合は、まず父親の認知が必要となります。認知のためには、父親(または子ども)の本籍地の役場に認知届を提出する必要があります。
認知をした上で、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申し立てを行います。申し立てが認められれば、子どもは父親の戸籍に入ります。
父親の戸籍に入った子どもは、両親が内縁・事実婚を解消しても、父親の戸籍のままです。
内縁の夫婦の子どもの相続権
内縁の夫婦の子どもは、非嫡出子として母親の戸籍に入り、そのままでは父親が死亡した場合に相続権がありません。
しかし、父親が認知していれば、嫡出子と同じ相続権が得られます。親が内縁関係を解消しても、認知された子どもには相続権があります。