夫婦や個人の借金
婚姻期間に夫婦で作りあげた財産は、夫婦の共同財産として離婚時に分割して清算します。このことは借金にも当てはまり、双方で借金を返済することになります。ただし、借金には種類があり、夫婦の借金と個人の借金を分けて考える必要があります。
生活のための借金は共有債務
ローンの例にもあるように、マイナスの財産(債務)も離婚時の財産分与に影響を及ぼします。
しかし、あらゆる債務が財産分与の対象となるわけではなく、対象となるのは夫婦共有の債務だけです。結婚生活を営む上で必要となる借金が、夫婦共有の債務となります。
共有の債務とみなされるケース
- 生活必需品の購入
- 家族の医療費のための借金
- 子どもの養育のための借金
- 住宅(不動産)ローン
- 自動車ローン
- 教育ローン など
返済は夫婦両方で負担し合う
財産分与の際には、プラスの共有財産の総額からこうした共有の債務を差し引いて、残った金額を夫婦で分け合うことになります。
原則的に債務は、その名義人が返済することになっています。
しかし、共有の債務に関しては夫婦両方に返済の責任があるので、状況に応じて協議し、夫婦で実質負担し合うことになります。
個人の債務になるものとは
結婚後に作った債務であっても、共有の債務とならないものもあります。
それは、家族の生活とは関係のない借金は、個人の債務となります。また、結婚前に作った借金も当然、個人の債務(特有財産)となります。
夫婦の借金の一例
- マイホーム、マイカーなどの購入のための借金
- 食料、衣料、家財などの購入のための借金
- 家賃、光熱費、水道代の支払いのための借金
- 家族の保険、医療費の支払いのための借金
- 海外旅行など家庭の娯楽費用のための借金
- 子どもの養育、教育のための借金 など
個人の借金の一例
- 結婚前からあった借金
- ギャンブルなど個人的な遊興のための借金
- 貴金属、高級外国車など、生活レベルに不相応な個人的ぜいたく品の購入、趣味のための借金
- スキルアップのための学費など、個人の仕事のための借金 など
妻(夫)が夫(妻)の借金の連帯保証人になっている場合
妻が夫の借金の連帯保証人や保証人になっている場合には注意が必要です。この場合、妻は「(連帯)保証人」としての地位にもとづいて責任を負うからです。
連帯保証人とは、主債務者と同様に責任を負い、負債について全額の支払い義務を負う人のことです。
たとえば、自宅を購入するときに住宅ローンを設定するケースがありますが、そのとき、妻が夫の住宅ローンの連帯保証人になっているケースが多いと思います。
この場合、主債務者である夫が住宅ローンの返済をしなければ、債権者は妻に対して全額の支払い請求をしてきます。
連帯保証人は、債権者に対して「夫に先に請求するように」などと反論できませんし、自分の負担部分も主張できません。ローンの全額を支払う必要があります。
ただし、支払った分は、後に夫に対して返還請求することができます。
また、妻が夫の負債の「連帯債務者」となっている場合もあります。連帯債務とは、複数の債務者が、全体の負債の返済義務を負うことです。
たとえば住宅ローン借入をする場合などに妻を連帯債務者とするケースがあります。
連帯債務の場合、離婚後に債権者から支払い請求が来たら、妻も残ローン全額の支払い義務がありますが、自分の負担割合を超えて支払いをしたら、超過分は夫に対して返還請求することができます。
以上のように、借金の問題は離婚時にもめる可能性があります。離婚を考えた際は、借金が誰の名義なのかだけではなく、自分が連帯保証人になっていないかなどを改めて確認して明確にする必要があります。話し合いがまとまらず、もめるようであれば専門家に相談することをお勧めします。