婚姻費用の分担と請求
婚姻費用の分担は夫婦の扶養義務
法律上、夫婦は同程度の生活を続けるためにお互いを扶養する義務があります。 離婚の決意後も離婚届を提出するまでは婚姻状態が続きます。
ですから、離婚を話し合う間も、婚姻費用として生活費をお互い分担しなければなりません。別居してもこの義務に変わりはありません。
ここで言う生活費とは、具体的にあげると、衣食住に関わる日常の生活費や子供の養育費、交際費などです。
夫婦の一方の収入が少ない場合、収入の多い方が少ない側の生活費を分担することになります。
婚姻費用の金額は、話し合いによって決めれば良いのですが、裁判所が目安を早見表で示していますので、参考にすることができます。
養育費・婚姻費用算定表
例えば、年収400万円のサラリーマンの夫と幼児1人を連れて別居した妻の場合、専業主婦で無収入もしくはパートで125万円くらいまでの収入なら、6万円~8万円が婚姻費用の目安です。 また、150万円くらいの収入が妻にあると、4万円~6万円になります。
このように、夫婦の収入バランスに応じて、婚姻費用の目安が分かるようになっています。また、金額の目安は、子供の人数や年齢別によっても複数のパターンが設定されています。
別居の原因と夫婦の扶養義務は別の問題
原因がどちらにあるにせよ、収入の多い側が家を出て婚姻費用を分担しなくなった場合などは、収入の少ない皮が婚姻費用を請求するのは当然の権利です。
しかし、収入の少ない側が、家を出て別居状態になった場合は、収入の多い側に婚姻費用を請求することはできるのでしょうか。
別居中であっても離婚成立以前なら、夫婦である以上は配偶者の扶養義務がありますから、婚姻費用をを請求されたときは負担しなければなりません。
たとえ、相手方が自らの意思で家を出て別居状態になった場合でも、家を出ざるを得ない状況を作ったのが自分であればなおさらです。
法律上は、別居の原因と夫婦の扶養義務とは分けて考えることとされているのです。 ですから、別居から離婚に至った場合、その責任については慰謝料で考慮されます。
ただし実際には、婚姻費用の額を決める際に、別居原因を作った主たる責任がどちらにあるかを考慮して決定されるのが一般的です。 裁判所の調停や判例でも減額を認める場合があります。
婚姻費用が支払わなくなったら
婚姻費用の分担は法律上の義務とは言っても、支払われない場合も多くあります。 また、最初は約束通り分担されていても、別居が長期化した場合は金額が減ったり、滞ってしまったりすることも珍しくありません。
このような場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担請求の調停を申し立てます。 家庭裁判所では、早見表を用いて婚姻費用額を提示してくれますので、高いの年収により金額の目安がわかります。
なお、早見表に従うなら、住宅ローンの負担額も分担すべき婚姻費用額に含まれて計算されるため、婚姻費用を受け取る側にとっては、実際の生活費に充てられる額がわずかとなってしまうこともあります。
調停で合意できれば、審判によって裁判所で婚姻費用額を決定します。 審判も強制執行力があるので、審判で決められた額を払われない場合には、裁判所に申し立てることで財産差し押さえ(給料なら2分の1まで)ができます。
もし早く結論を出したいならば、急ぐ理由を裁判所に提出し、認められれば、調停を省いて審判を行うこともできます。 なお、婚姻費用が払われない時の調停申し立ては、早めの方が良いでしょう。
婚姻費用の支払い義務が発生する時期について明確な決まりはありませんが、多くの場合は相手に請求した時点からと考えられています。 調停を申し立てれば請求の意思表示が明確になります。